重たい買い物袋を2つと、部活鞄を背負った彼女のために、買い物袋を持って家まで送っていくことになった。

二人で並んで歩く。

小林さんの荷物を2つ持つ代わりに、俺の夕食が入ったビニール袋を小林さんが持った。

「先生、意外と力持ち?」
「意外とか、失礼ですね。
一応男ですよ」

「しかも、背、高いよね。
あたしの目線が上になる」
「?」

横に並んで歩く小林さんの顔を見る。

182㎝ある俺の視線の高さに小林さんがいる。

確かに、女の子と並んでこの視線の高さというのはあまり・・・全く経験がなかった。

「身長、何センチですか?」
「女子に聞く質問ではない」

何気なく聞いたことにむすっとする小林さんに、
「いやいや。体重を聞いているわけではありませんよ」

「体重も駄目だけど、身長もアウト!」
「ええええ?」

「背が低い子なら問題ないんだろうけど、背が高い子に聞くのはデリカシーがないと思う!」
「でも、僕より低いよね?」

その瞬間、小林さんは顔を真っ赤にした。

「え?」

照れてる?
今の会話に照れる要素はあったのか?

そんなことを考えながら小林さんが見ていると、小林さんはいきなり視線を外した。
「お、送ってくれてありがとうございました! 
家、もうそこだから!」

俺が持つ買い物袋をあたふたと奪って、走りだす。
少しして振り返ると、走って戻ってきた。

俺の前に立って、
「荷物、持ってくれてありがとう。 
それと、先生の方が敬語とかおかしいから。 今みたいに普通に・・・話して欲しい…です」
「フッ。ははは」
しどろもどろと話す小林さんに笑ってしまう。

「小林さんは教師に対してもう少し敬語を使ってくださいね」
「他の先生には、ちゃんと使ってるよ」
「俺にも使えよ!」

つい、『俺』と言ってしまった。

「へー。先生、本当は『俺』って言うんだー。 確かに『僕』ってキャラじゃないもんね」
「はあ。せっかく穏やかキャラにしてるのに。 
まあ、小林さんならばれてもいいか。 でもみんなには内緒な」

「どうして?」
「穏やかな人柄でつかんだ就職先だからね。
毎年査定あるから雇われ教師も大変なんだよ」

「へー」
「それより、弟待ってるんじゃなかったか?」

「そうだ!じゃねー」
「おうー。気を付けてなー」


照れた原因は分からなかったけれど、何かしら彼女を照れさせることがあったのだろう。

顔を赤らめた小林さんはかわいかったなと口許が弛んだ。

そんなことを思いながら、走っていく小林さんの可愛らしさに目を細めて見送っていた。

そして、彼女を見つめている自分に気が付いて、慌てて首を振る。

高校生相手になに考えてるんだ。 
やばいだろ。
さっさと戻って、夕食にしようと帰路を急いだ。