俺は元あった並びに戻すために机を動かした。



小林の支えになりたいと思ったのに、俺の存在は彼女にとって邪魔でしかないのだろうか。

たった7年、先に生まれただけなのに。

10年たったら一緒にいることも普通ならばどうして今一緒にいてはいけないんだ?
10年先がよくて今がダメな理由が理解できない。

この間言われたが、在学中がダメで卒業まで待たなくてはいけないという理由だってわからない。

教師だから?

教師だって人間だ。 
生徒のことを好きになることだってあるだろう。

卒業したら交際も結婚も気にしなくていいなら、今だって気にしなくてはいいじゃないか。


ただ、俺は小林が好きなだけだ。

小林だって俺のことが好きだと言ってた。
・・・もうずいぶん前だけれど、今だって俺のことをまだ好きなのは見ていれば分かる。

好き同士なのにどうして付き合えないんだよ。

モラル?そんなもん、クソくらいだ!


ガタンッ!
椅子が大きな音を立てて倒れた。
俺はその椅子の背を取った。



・・・全部。

全部俺のエゴじゃないか。

全部、俺が小林と一緒にいたいだけじゃないか。


椅子を起こして、窓の外に目を向けた。
グラウンドの運動部を、そしてバレー部が練習をしているであろう体育館に目を向けた。



・・・最低な奴だな、俺は。



俺が小林にできることは何だろう。
そう考えると、俺は泣きそうになった。


なぜなら。

俺にできる最善なことは【小林の隣にいないこと】だと分かってしまったから。


「はぁ」

溜息を一つこぼし、教室を後にした。