でも、10年たてば小林と俺が一緒にいても不自然ではないんだよな。

10年か・・・。

「長いな・・・」

ついぽつりとつぶやいていた。
慌てて口を押えた。
聞こえたか?
三橋さんの顔を窺った。

三橋さんは俺をじっと見つめた。
「・・・先生、もしかして本当は那奈のこと・・・好きなの?」
「・・・・」

気付かれた?
何て誤魔化そうか?
必死に頭をフル回転させて考える。

「お願い!先生!」
「え?」

「昨日一緒にお見舞いに行った子たち、いろんなこと言ってたの!」
「いろんなこと?」

「先生と付き合ってたら、退学なんでしょ?」
「は?」

「入院中ずっと一緒にいたなんじゃないかとか、不祥事になるからから試合に出られなくなるとか、それなら部活やめて欲しいとか、バレーできなくなったら学校辞めさせられるとか」
「そんなことあるわけないよ」

「でもッ!「ありません!」」
「・・・・・」

「小林と俺は付き合ってないから。
そんなことになるわけがないでしょう?」

目の前では椅子に座ったまま三橋さんが心配そうな、泣きそうな顔をして俺を見ていた。

「だから、小林は今まで通り、バレーができるよ。
三橋さんは心配しなくても大丈夫、です」
俺は笑顔を作った。

「本当、ですか?」
「本当です」

「さあ、そろそろ部活に行った方がいいのでは?」
「あ。うん」

三橋さんが走って部活に向かった。