「ゴホゴホッ」
「えええ!?そうだったんですか!?」

「まあ、秘密にするほどのことではありませんけど、自分からペラペラと言うことでもありませんからね。
はい、おしぼり。
大丈夫ですか?」
「す、すみません」

俺は突然のカミングアウトに驚き、担任は飄々とした顔でおしぼりをくれた。

俺が落ち着いたのを見計らって、先生は話し始めた。

「教師と生徒の恋愛も結婚もよくある話です」
「・・・そうなんですか?」
担任は頷いた。

「しかし、皆さん『相手は生徒』ということを理解していますし、こっちは大人ですから、相手のことを考えると在学中に付き合うっていうのはなかなかハードルが高いですよね」
「でも先生は結婚までされたんですよね?」

「隠れて付き合ってたんですか?」
「付き合ってませんね。
でもかわいい子だなとは思ってましたよ」

「え?どうやって付き合うことになったんですか?」
「卒業した後、大学の合格発表が合ってその報告に来た時に、二人でお祝いをしようってなって、その時に僕からちゃんと告白しましたよ。
まあ、奥さんはずっと好きだって言ってくれてましたけど。
ってこれはのろけなんですけどね」

「ごちそうさまです」
「はははは。
まあ、中には本当に教師とは聖職で、教師と生徒の恋愛はタブーだという方もいらっしゃいますけど。
教師だって人間ですからね。
生徒に対し恋愛感情を持ってしまったとしても仕方ないと思うのですよ。
問題は相手や周囲にどれだけ誠実かってことじゃないですか?
ところで、いつからのお付き合いなんですか?」
とさらっと聞いてくるが、
「ですから、付き合ってもいません」
と否定した。

二人はは目を丸くし、
「付き合ってなくてアレはないしょう!?」
「そうそう、付き合ってないのに抱きしめちゃダメですよ!」

「抱きしめてなんかいませんよ。
ただッ!」
「ただ?」

「‥‥ただ・・・小林が泣いて・・・俺は少し胸を貸したというか‥‥」
「‥‥まあ、貸しちゃだめだけど…小林にとって今の状況は、苦しいでしょうね・・・はぁ」
伊達は苦しそうに溜息をついた。