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拉致られて連れて来られたのは近くの焼き肉屋だった。

ジュウジュウと肉の焼ける匂いを嗅ぎながら、
「どうして焼肉なんですか?」
とたずねた。

小林との関係を追及されるのか?
それとも説教されるのか?
どちらにしても焼肉って気分ではないだろう?

「時間を気にせず話すところって行ったら居酒屋か焼肉しか浮かびませんでしたからね」
伊達がハイボールを飲み、担任が肉を反そうとトングを手に取った。

「そうそう、僕は車がありますし」
「俺は乗せてきてもらったんで、飲んじゃいますけど」

「それにしても浅倉先生が小林さんの所にいるのには驚きましたよ。
これ、そろそろ焼けましたよ」
担任がトングで指す肉を伊達が嬉しそうに食べた。

「そういえば、夏の大会にも観に来てましたよね」
「他の生徒にデート現場を見られて噂にもなってましたよ。
浅倉先生はツメが甘いんですよ。
見つかっちゃだめでしょう」

砕けた雰囲気の二人に驚きながらも、交際の噂を否定した。
「ダメもなにも、別に付き合ってませんし」

「まあまあ、そんなに否定しなくても。
ここだけの話、というわけでもないんですけど、僕の奥さんは元教え子ですよ」
「ええっ?」
「ぶっゲホゲホ」
えええ?
なんなんだ、突然?!