「那奈ー!お見舞いに来たよー!」
シャッ!
半分閉められていたカーテンが勢いよく開き、俺は慌てて離れた。


「「「「「「・・・・・!?」」」」」」


そこにいたのは小林の担任とバレー部顧問、制服姿の女子3人。
無言の気まずい空気が流れる。

「えええ!?那奈と浅倉先生って、そういうことなの!?」
「それって、つきあってたってこと!?」
「きゃーーーーー」


「浅倉先生、ちょっと」
俺は教師二人に連れ出された。病室から出た。
背後では「きゃあきゃあ」という叫び声が聞こえていた。

「浅倉先生。流石に駄目でしょう」
「こんなところで抱き合ってたりしちゃ、誰に見られるかわかったもんじゃないですよ」
小声ではあったが、焦ったように早口で言われた。

「抱き合ってなんていませんよ!」
「抱き合ってなかったんですか?」
「はい。確かに距離は近かったかもしれませんが、抱き合ったりなんてしていません」

はっきりと否定する俺に対し、先生二人は困惑したように、目を合わせていた。

このままでは小林が何を言われるかわからない。
退学とはならないが、このまま部活に残りたいと言っていた彼女の希望は叶わなくなってしまうかもしれない。
謝ってうやむやに終わらせるわけにはいかない。
きちんと否定しなくてはならないのだ。


「えー!そーなのー?」
「なんだ、つまんないー」
教師陣の重い空気を払うかのような、病室の奥から聞こえるうかれた生徒たちの声に目をやる。

「ギュウでもしてるのかと思った」
「そんなことあるわけないじゃない。
でも、まあ、浅倉先生ならアリなんだけど」
「あははははっ。私もあり!」
「あははははっ」

三人で小林のベッドの方に戻った。

「ごめんね、先生」
小林が、俺を見た。
その瞳は赤く充血し、くっきり残った涙のあとは彼女が泣いていたことを皆に伝えていた。

腫れた瞼を細めて、
「私、がんばるから!
ありがとう、先生!」
と、ニカッと微笑んだ。


先生方は、
「小林さん、応援してますよ」
「小林!待ってるからな!早くよくなれ!」
と励ました。




そして、こっそりと、俺だけに聞こえるように、
「気を付けてください」
と、真剣な目で忠告をされた。