コンコン。


「失礼しま~す」
小林の病室へそっと入る。

2人部屋の病室は独特な消毒液の匂いがした。

同室の女性に軽くお辞儀をし、小林のいる窓側のベットへ近づいた。


半分しまったカーテンの前で、
「小林さん?」
と声をかけた。

「・・・・」
返事がなくてもう一度、声をかける。

「小林さん?」
「え?先生?」

「カーテン、あけてもいいですか?」
「あ、うん。
どうぞどうぞ、と言っても、もう半分開いてるよ。
なんで開けていいかって尋ねるの?」

「まあ、普通尋ねますよね?
着替えてたりしたら、大変じゃないですか」
「確かにー。
きゃあってなるわ。
それにしても、先生。久しぶりだね?」

「そうですね。怪我、どうですか?」
「うん。大丈夫」

「・・・・・」
「・・・・・」


大丈夫ではないことは分かっている。

病院に来る前に、バレー部顧問の伊達先生から様子を聞いた。
怪我の状態が芳しくなく、手術、リハビリ、復帰までのトレーニングをしていたら卒業を迎えるだろうということ。
バレーの特待生として入学した彼女はスポーツ科から普通科に編入するか、転校することになるだろうと。

大丈夫とか、すぐに良くなるとか、がんばれとか。
そんな誰にでもいえる言葉すら、今の彼女には響かないことは目に見えている。

俺は、彼女をはげます言葉が出てこなかった。