この体育館に来るのは久しぶりだな。

1階アリーナに向かう廊下を横目に、観客席のある2階への階段を昇る。


小中高とバスケをしていた俺は、この会場に何度も試合をしに来ていた。
最後に来たのは高校3年の時か・・・。

膝を壊してスタメンどころがベンチ入りメンバーからも外された俺は、3年の最後の試合をこのスタンドから応援することになったのだった。


観客席の一番後ろに立って周りを見渡した。
そして、コートがよく見える席に並んで応援している学生たちをぼーっと見つめて、懐かしさを覚えるのだった。


ああ。あのあたりだったかな。


当時の俺は、観客席で応援する部員たちの一番前に立って叫んでいた。

(本当はあそこに立っているのは俺のはずだった・・・。)

そんな悔しい思いを抱きつつ、周囲にその感情を見せないように、一緒に練習してきた仲間たちに声を張り上げて応援していた。


高校最初の試合は2階から応援していた。
1年の終わりでベンチ入りのメンバーに選ばれて、必死にプレーをした。
2年の時、この場所で膝に痛みを感じた。
大会が終わった後も時々痛みは出た。
しかし、少し休めば痛みは消えたのでシップをして誤魔化した。
だが、常に違和感だけが残っていた。

痛みは次第に強くなっていったが、試合に出たかった。

練習を休みたくなくてサポーターをして誤魔化しながらまた練習をして、痛み止めを飲んで練習をしたが、結局スタメンを外され、ベンチ入りもできなくなった。

悔しさと怖さを誤魔化すように更に練習をし、結局思うように動けなくなり、そのまま3年の引退試合を迎えたのだった。



「すみません」

え?
突然、後方から声が聞こえ、振り返った。

応援に来たらしき保護者が「通りたい」と態度で訴えられる。
どうやら通路に立ち止まっていて通行の妨げになってしまっていたようだ。

「ああ、すみません」
そう謝って端に寄る。

ノスタルジックな感情に引きずられてしまった。
そんな感情を振り払うように右手で前髪をかき上げた。