幼い頃から比較的器用になんでもこなしていたため、なにかにのめり込んで努力したり、趣味に没頭したりといったこともない。勉強も運動も楽しくないわけではないけれど、周囲との温度差は感じていた。
それは人間関係も同じ。両親や三つ年下の弟は大切な存在だし、友人との仲も良好だ。けれど『三組の早織ちゃんが可愛い』とか『アイドルのみおりんが最推し』などと騒いでいるのにはついていけなかった。
男同士の会話に交ざらない律に対し、スカした態度が気に入らないと難癖をつけてくる者もいたが、全く気にならない。勝手に言っていればいいと無視していると、なぜか逆に周囲からの評価が上がったが、それすらもどうでもよかった。
なにかに執着することも、誰かに心を動かされることもなく、毎日を淡々と過ごしていたのだ。
あの日、未依に出会うまでは――。
律が小学六年生の頃、父が勤めていた大学病院から隣県の総合医療センターへ移ったのをきっかけに引っ越すこととなった。
新天地で出会ったのは、近くに住む六つ年下の女の子。
引っ越しの挨拶をきっかけに母親同士が急速に親しくなり、必然的に律と櫂は未依に引き合わされた。



