離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


律はいまだに『いいから、部屋に入れてよ』と喚くケイトを睨みつけ、大きくため息をついた。

『疲れてるんだ。帰ってくれ』
『どうして? なんで帰国するの? ずっとこっちにいればいいじゃない。お祖父様の手術をしたのだって、私との仲を認めてもらうためでしょう?』
『意味がわからない。何度も言ってるが、俺には日本に妻がいる』
『……まさか、本当に私じゃなくて奥さんを選ぶっていうの?』

今さらなにを言っているんだと目を眇めると、ケイトはみるみるうちに顔を真っ赤にして怒り出す。

『信じられない! この私があなたを気に入ったって言ってあげているのに!』
『悪いけど、はっきり言って迷惑だ』
『な、なによ! こっちに来てもう五年でしょ! 律の奥さんだって、新しい男を作ってるに決まってるわ!』

律は子供の癇癪に付き合ってはいられないと、それ以上相手にせずに自宅マンションのエントランスをくぐったのだった。