けれど自信過剰なのはいただけないし、人の話を聞かないのはもっと困る。ケイトには微塵も興味がないと、いつになったら理解してくれるのか。

彼女は律の師事するオリバーの孫であることを笠に着て、関係を迫ってくるのだ。最初は恩師の孫娘だからと一応丁重に断っていたが、徐々に面倒になって今では適当にあしらっていた。

アメリカに来たのは多くの症例を診て研鑽を積み、医師としての技術を向上させるためである。くだらない人間関係に煩わされたくはない。

しかしケイトは誰に聞いたのか、こうして律の住んでいるマンションにまで出没するようになった。

『奥さんとは、いずれ別れてくれればいいわ』
『年の差なんて気にしなくてもいいのよ』
『あなたはいずれお祖父様の後継者になれるかもしれないんだから、私を選ぶべきだわ』

どれだけ断っても諦める素振りを見せない。それどころか、律が靡かないのは恋愛の駆け引きを楽しんでいるからだと都合のいい解釈をしているようだ。

とっとと二年の留学期間を終えて、未依の待つ日本に帰りたい。