強い眼差しに射すくめられ、未依は唇を引き結んだ。
そんな表情を見て律はなにを思ったのか、眉尻を下げる。幼なじみだというのに、この数分は初めて見る表情だらけだ。
「⋯⋯悪い。怖い目にあったばかりなのに、今する話じゃないよな」
話を切り上げると、律は「出勤は絶対に人通りの多い場所を通って。離れた場所へ買い物に行くならタクシーを使うこと」と念を押す。
「うん。ありがとう、律くん」
律はポーカーフェイスで、寡黙な印象が強い。にもかかわらず、こうして言葉を尽くしてこれまでの経緯や想いを伝えてくれたのは、それだけ未依を大切に思ってくれているからだと自惚れてもいいだろうか。
普段はおしゃべりのはずの未依だが、今はうまく言葉がでてこない。
「それから、その、律くんの気持ちは嬉しい⋯⋯から」
初恋の相手で、ずっと諦めなくてはと思っていた人。その彼からずっと好きだったと告げられて、嬉しくないはずがない。



