離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「……未依を失うのが、怖かった」

心情を吐露した律を前に、未依は驚きすぎて固まってしまった。

(私を失うのが、怖かった……?)

ぽかんとした未依を見て、律は「情けないよな」と自嘲気味に呟いた。

「もしも好きだと伝えた上でプロポーズをしたら、きっと未依は須藤の家から出ていくと思った。好意に応えられない以上、未依は俺だけじゃなく、俺の両親にも二度と頼らなかっただろう?」

あの時は、未依は律と結婚できるのが嬉しかった。だから想いを伝えてくれていたら、きっと泣くほど喜んでいただろう。

けれど仮に、律に対する恋心がなかったとしたら。

自分を好きだといってくれる気持ちに応えられないのなら、これ以上甘えてはいけないと早々に須藤の家を出ただろうし、それ以降の付き合いも必要最低限にしただろう。実際、つい先日も、離婚したあとは転職しようと考えていたばかりだ。

「それがわかってたから、これから長く日本を離れなくてはいけない時に、安易に告白なんてできなかった。……なんて、こんなの言い訳だよな」