離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


看護学校時代の友だちから、看護師を見下してくる医師や、嫌がらせをしてくる先輩看護師の話を聞いているため、どれだけ未依の働く環境が恵まれているのかはわかっているつもりだ。

特にふたつ上の先輩看護師である香坂あかりには世話になっていて、彼女に黙って転職活動をするのは心苦しい。

けれど、できるだけ早く転職先を見つけたい。さすがに離婚したあともこの病院で働き続けるほど、図太くはいられないから。

(とにかく片っ端から探していけば、なんとかなる)

猪突猛進で楽天家な未依は、持ち前の明るさでうじうじと悩むことが少ない。

(ため息ばっかりついてると、幸せが逃げちゃうしね)

食事をしながらスマホの求職サイトを見つめていると、食堂がにわかにざわついた。

ふと顔を上げて、すぐにその原因に気がつく。

食堂の入口で、スクラブ姿のふたりの男性がメニュー表を見ていたのだ。長身のふたりは、ただ立っているだけで絵になる。

(しまった。休憩時間が被っちゃったんだ……)