離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


数日分の衣類やメイク道具など身の回りのものを持って、未依は律のマンションへとやって来た。

「……ここ?」
「あぁ。ここが一番病院に近かったから」

未依は、勤め先の病院のすぐ近くにあるハイグレードマンションを前に立ち竦む。

まるで宮殿の庭園を思わせる広い敷地の中に、五つの低層マンションが建っている。その中でも一際大きなA棟の六階に律の住む部屋がある。

優美な吹き抜けのエントランスホールにはコンシェルジュデスクやラウンジが置かれ、奥にはキッズルーム、メディカルチェックセンター、トレーニングジムなどの共有施設があるという。

(別世界過ぎる……)

通勤が楽だからという理由で、こんな豪華なマンションに住む選択ができる人がどれほどいるのだろう。

日本とアメリカの医師の報酬が桁違いだということは聞いていたけれど、それはどうやら本当らしい。

根っからの庶民の未依には、このマンションを購入するのにいくらかかるのか想像もできない。