離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


両親の葬儀の時も、律はこうして未依を抱きしめてくれた。

彼の腕に包まれ、その体温を感じていると、恐怖に竦んだ身体が少しだけほぐれるような気がする。

律の与えてくれる安心感のおかげで、未依は呼吸が楽になった。

「すぐに必要最低限のものだけ持って、うちに行くぞ」
「え?」
「誰が入ったかもわからない部屋に、ひとりで置いておけるわけがないだろ」

誰がいつ再び侵入してくるかもわからず、このまま自宅で過ごすのは怖い。

けれど、自分から離婚を言い出しているこの状況で、彼に甘えてもいいのだろうか。

律に迷惑をかけないよう、彼を自分から自由にしてあげたくて離婚を切り出したにもかかわらず、また彼に縋ろうとしている。

そんな未依の葛藤に気付いたのか、律がそっと頬を包みこんだ。

「俺が、未依を守りたいんだ。頼むから一緒に来てくれ」

当たり前のように手を差し伸べてくれる律に、未依は躊躇いながらも黙って頷いた。