「律くん……っ」
『櫂から未依が邪魔だから引き取ってくれと連絡が来たんだけど、……未依? どうした?』
「へ、部屋に⋯⋯誰かが、入ってる気がする⋯⋯。洗い物が、どうしよう、鍵閉め忘れたみたいで⋯⋯」
支離滅裂な未依の説明でも、要点は伝わったらしい。電話の向こうで、息をのむ音がした。
『すぐ行く。電話は切らずに部屋から出て、人通りの多いところに移動して』
律の指示で自宅からほど近いコンビニで彼を待つ。それから十分もしないうちに律が駆けつけてくれた。
彼とともに自宅に戻り、警察に通報する。やってきた警察官二名とともに室内を確認したが、物の配置が変わっていただけで、なにひとつ盗まれたものはない。
侵入した形跡も未依の証言のみで物的証拠があるわけでもなく、警察官も困り顔だ。
「郵便物が開封されていたとなると、なんらかの情報を知りたかったと考えられます。ストーカーの可能性もありますし、周辺のパトロールは強化します。ですが、現段階では……」
金銭的被害だけでなく、女性宅でよくある下着類の窃盗などもなかったため、これ以上は動きようがないということなのだろう。



