離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


どうやら今日は自宅の施錠を忘れたらしい。

自分の迂闊さにため息をつきながら玄関に入り、洗面所で手を洗ってからリビングへと向かう。

夕食の準備をするのに冷蔵庫を覗こうとして、ふと立ち止まった。

キッチンのシンクには食器ひとつなく、水滴もすべて拭き取られている。水切りカゴに置かれているのは、朝食時に使用した食器とマグカップだけ。

それらを見た未依は、恐怖に固まった。

仕事はともかくプライベートは比較的ズボラな未依は、キッチンのシンクの水滴を拭き取るほど几帳面ではない。

(今朝はやる気が起きなくて、朝ご飯を食べた食器はシンクに置きっぱなしにしてたのに……)

決して記憶違いではない。

昨日は律の突然の告白に驚いたせいで帰宅してもなかなか寝付けず、夜勤後の生活リズムが狂ってしまった。そのせいで寝不足になり、家事もそこそこに千咲の家へと向かったのだから。