離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


医学専門誌に写真つきで名前が載っていたし、成功率が一桁と言われる手術をいくつも成功させたと日本でも大いに話題になった。喜ばしいことのはずなのに、未依は律がとても遠くに行ってしまったのだと感じる。

彼は昔から勉強もスポーツも優秀だったけれど、学生の頃は無邪気に『すごい! カッコいい!』と笑っていられた。

けれど、神の手を持つと言われる世界的医師から手技を絶賛されるほどずば抜けて優秀な医師となった今、一介の看護師の自分とは釣り合わないと思い知らされる。

そう思うのは未依だけではなく、周囲の人たちも同じらしい。

『平凡な看護師のくせに』
『子供っぽすぎて律先生には釣り合わない』

食堂でのやり取りを又聞きした何人もの女医や看護師たちが、アメリカ帰りのサラブレッドを射止めようと告白したが、律は「結婚してるし離婚の予定もない」とニコリともしない塩対応で撃退したため、怒りの矛先が未依に向いたのだ。

すれ違う際に耳元で囁かれる悪意は、どれだけ気にしないようにしていても少しずつ心を蝕んでいく。

「ここ数年、ずっと離婚することしか考えてなかったし……。なにより、私と律くんじゃ元々無理だったんだよ」
「未依……」