離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


その相手が、初恋の律であればなおのこと。

「でもさ、お互いに住んでいる場所すら知らなかった関係なんて、夫婦とは言えないでしょ?」

だからこそ、そろそろ歪な関係性に終止符を打つべきなのだ。

冗談めかして言うと、律はハッとした表情を見せたあと、唇を引き結ぶ。悔しいとも、苦しいとも違う、後悔の滲むような表情だった。

もしかしたら、罪悪感に苦しんでいるのかもしれない。

一度告白し、恋愛対象外だとハッキリ言われたにもかかわらず、未依は律を諦められなかった。諦めようとするほどに苦しくて、忘れられるまでは思い続けようと開きなおったという方が正しいかもしれない。

未依の気持ちを知りながら夫婦となり、女性として愛せなかった彼が罪悪感を持っているのならば、そんな必要はないのだとわかってもらわなくては。

家族になると言ってくれたのも、実際に書類上の夫婦になったのも、律の優しさ。両親を亡くし、頼る親族のいない未依に同情しただけにすぎない。

それは未依もきちんと理解している。