離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


その言葉に、未依は首を横に振った。

「律くんが謝る必要なんてないよ」

当初の予定では二年ほどで帰国する予定だった。けれど優秀だった律をアメリカの病院がなかなか手放さなかったのだと義父から聞いている。

「向こうでたくさん勉強して、多くの患者さんを救ったんでしょ? それに、これからも律くんを待っている患者さんはたくさんいる。そのために頑張ったんだって、ちゃんとわかってるから」

結果的に四年半以上もの時間が流れたけれど、それは律のせいではない。

「あの日、律くんが家族になるって言葉にしてくれて、そばにいてくれたから、私は本当に救われたの。恨んでなんてないし、心から感謝してる」

高校三年生だった未依が突然両親を失い、親類もおらず天涯孤独となった。それでも今こうして看護師として働けているのは、律や須藤の両親が救いの手を差し伸べてくれたからだ。

幼なじみという枠を超え、家族になると言ってくれた。唯一の肉親である両親を亡くしたばかりの未依にとって、その言葉はたったひとつの支えであり希望だった。