未依はきゅっと唇を引き結んだ。すると、彼が小さくため息をつく。
「そうやってこの結婚を同情だと勝手に決めつけて、誰にも知られずに離婚できれば未依は満足なのか?」
そう尋ねた律は、なにかを希うかのような熱っぽい眼差しを湛え、未依の心を揺さぶろうとしてくる。
「……どういう意味?」
勝手に決めつけるもなにも、この結婚に同情以外の意味はない。
恋愛対象外だときっぱり言い放ったのは、他でもない律本人なのだから。
けれど律は質問に答えることはなく、未依は仕方なく彼から視線を外して黙々と食事を終えた。
会計時に未依の分をどちらが払うかで一悶着あり、そこで問題が発生した。いくらバッグを漁っても財布が見つからないのだ。
「……ごめん、お財布忘れてきたみたい」
散々自分で払うと言った直後の失態に、穴があったら入りたいほどの羞恥心が湧いてくる。



