離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「離婚はしないと言ったはずだ」

渋面でこちらを睨むように見つめられ、なぜそこまで頑なに拒むのかわからず未依は首をかしげた。

「どうして? 私はもう大丈夫だから、律くんもちゃんとした結婚を――」
「してる」

未依の言葉を遮り、律が食い気味で反論する。

「結婚なら、もうとっくにしてる」
「そういう意味じゃないってわかってるでしょ。同情とかそういうのじゃなくて、本当に好きな人とっていう意味だよ。さっき言ってくれたでしょ、看護師として一人前になったって。律くんたちのおかげで立ち直れたし、ひとりでも生きていけるくらい大人になったの。だから……」

未依は早口で捲し立てた。

けれど、どうしてだろう。未依の方が正しいことを言っているはずなのに、なぜか律からは責めるような圧を感じる。

離婚を拒む理由を聞き、家族になってくれた感謝を伝え、円満に離婚届にサインをしてもらうはずだった。

それなのに、離婚する気はないのだという揺るぎない瞳に魅せられ、なにも言えなくなってしまう。