離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


一時帰国すらままならないほど忙しく働く律には、きちんとそばでサポートする人がいるべきだと感じたのだ。

引き際を悟り、離婚届を準備して、櫂にだけは心の内を伝えて退路を断ち、須藤の家を出た。富美や武志には離婚の意思を伝えていなかったけれど、察しているように思う。

そもそも、律との入籍が唐突すぎたのだ。

律が両親に未依と結婚すると宣言した時、彼らはとても驚いていた。いくら一緒に暮らしていたとはいえ、未依と律の間に愛や恋なんて甘い雰囲気は皆無だったのだから、須藤の両親が驚くのも当然だと思う。

(おじさんとおばさんは結婚に反対しなかったけれど、それも律くんが強引に押し切ったからだろうし)

だからこそ、彼を解放しようという決意は揺らいでいない。律には、誰よりも幸せになってほしい。

「⋯⋯あのさ、アメリカに恋人とかいないの?」

未依が尋ねると、律はあからさまに不機嫌な顔になった。

「いるわけないだろ。……まさか、未依にはいるのか?」
「いないけど、そろそろちゃんと考えたいなって思ってる。私ももう二十七だし、バツイチだと早めに婚活しないと貰い手がなくなっちゃうよ」