離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


離婚についてどう切り出そうか迷っていると、律から質問が飛んできた。その通りなので、未依は焼き魚定食に箸をつけながら頷く。

「うん。毎月少しずつだけど」

両親が亡くなったあと、未依は保険金や遺された資産をすべて相続した。高校生にはとてつもなく大きな額に思えたけれど、ひとり暮らしをしながら大学四年間の学費を払っていたら、すぐに尽きてしまっていただろう。

実際は、未依は須藤家に居候していたため家賃や光熱費はかからなかったし、食費なども請求されることはなかった。

さらに、大学の学費は武志が入学当初に一括で支払いを済ませてくれた上、数年前にはその額を律が武志に返済したのだと聞いた。

頼れる親戚がいない未依を救ってくれただけでもありがたいのに、学費までお世話になるなんて、さすがにそこまでしてもらうわけにはいかない。

本来なら律に返済すべきだろうが、彼は未依の就職と同時に海外へ飛び立っていったため、そういった話し合いすらできなかった。生活費用にとクレジットカードを渡されてはいたが、名ばかりの夫婦のため彼の銀行口座なども知らない。

そのため、未依は富美に毎月一定額ずつ返済をしている。もちろん、律から渡されたクレジットカードを使ったことはない。

「母さんが困ってたぞ。返さなくていいと俺からも伝えるようにって、一昨日も電話で言われた」
「だって、律くんの口座知らないから」
「夫婦なんだから気にしなくていい。両親だって同じ考えだ」
「そういうわけにはいかないよ」