未依が自分の感情を消化しきれないままなのを知ってか知らずか、律は未依をエスコートするように歩き出す。
そうして連れてこられたのは、元々未依が行こうとしていた定食屋だった。
「ここ?」
「おしゃれなカフェじゃなくて悪いけど。夜勤明けはガッツリ食べたい派なんだ。単品でも頼めるけど、食べ切れなければ俺が食べるから」
「大丈夫、めちゃくちゃお腹すいてる」
まさか律も同じ店を知っているなんて意外だったけれど、アメリカに行く前はこの病院で数年働いていたのだから、なんら不思議ではないと思い直す。
「朝は弱くてトースト半分しか食べなかっただろ」
「律くん、それいつの話? 私も夜勤明けはしっかり食べたい派なの」
学生の頃は課題や実習に追われて夜遅くまで起きていたため、朝食を食べる気力すらない時期もあったけれど。
「未依の口から夜勤明けなんて聞くと、看護師になったんだって実感するな」
幼い頃から一緒にいるせいか、律は未依が成長してからも子供に対するような態度で接する。



