離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


律は橋田の背中を睨みつけながら、未依に尋ねる。

「先日退院された患者さんなの。たしかにここじゃなくてスタッフステーションに行くべきだったけど、あんなキツい言い方しなくても」
「あいつは世話になった礼をしに来たわけじゃないだろ。カフェに誘うなんて、礼の範疇を超えてる。それとも、あいつについていく気だったのか?」
「そんなわけないでしょ」

ムッとして答えると、律はホッとしたように頬を緩める。

「ならいい」

頭をぽんと撫でられ、未依の心臓が大きく跳ねた。これから離婚をする相手にときめくなんて、不毛にも程がある。

(相変わらず顔がよすぎるんだもん。特別な意味はなくて、女子としての反射みたいなものだから)

心の中で、誰にともなく言い訳する。

「腹が減った。ほら、行くぞ」
「えっ?」