離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


未依が言葉に詰まっていると、律が「それよりも」と橋田の話を制す。

「職員通用口で待ち伏せなんていう非常識な真似はやめてください。彼女だけでなく、他の職員にも迷惑です」
「な……っ」
「待って、律くん。橋田さんはお礼を言いにきてくれただけで――」

そう言い募ろうとしたが、律に一瞥され口を噤む。律が正しいとすぐに理解したのだ。

改めて世話になったお礼を言いたいのなら、スタッフステーションに来ればいい。そういった律儀な患者も少なからずいるし、看護師として元気になった彼らの姿を見られるのは嬉しいことだ。

けれど通用口で職員を待ち伏せをするなんて、少なくともこれまで未依は聞いたことがない。律が非常識だというのも、他の職員に迷惑になるというのも頷ける。

「二度目はない。次は警備員に通報する」

あえて厳しい口調で言い放った律に対し、橋田は何度か言い返そうと口をぱくぱくさせていたが、結局言葉を見つけられなかったようで、唇を噛みしめながら踵を返し去っていった。

「……今のは?」