離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「あなたは僕がどれだけ吐いて汚しても嫌な顔をせず、苦しんでいる時は微笑みながら励ましてくれた。それがどれだけ力になったか」
「橋田さんが頑張って病気と闘ったんです。私は少しお手伝いしただけですから」

看護師は入院患者の世話をするのが仕事だ。

橋田にだけ特別な待遇をしたわけではなく、未依は可能な限り患者に寄り添いたいと考えて行動しているだけだ。

しかし、なぜか彼は食い下がってくる。

「神崎さんの献身的な看護のおかげで、僕は生まれ変わった気がします。本当にあなたに感謝しているんです」

これまでの入院生活とは打って変わって饒舌に話す橋田に、未依は内心で首を傾げる。

「それで、あの、おしゃれなカフェを調べてきたんです。きっと神崎さんも気に入ってくれると思います」
「いえ、本当にお気持ちだけで――」

再度、未依が断ろうとしたところで、突如後ろから肩を抱かれた。驚く間もなく、冷たく響くバリトンボイスが会話に割って入ってくる。