離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


橋田は寡黙な性格のようで、入院中もあまり会話をした記憶がない。質問には答えてくれるけれど、積極的に雑談に加わったりはしなかった。

そんな彼が、わざわざお礼を言いに来てくれるとは想定外だ。

「ありがとうございます。お気持ちだけいただきますね」

退院した患者と個人的に食事する理由はないため、未依は笑顔で遠慮する旨を告げた。

すると、彼は熱っぽい視線を未依に向ける。

「神崎さんが僕を気にかけてくれたから、僕は辛い入院生活も頑張れたんです」

橋田は急性胆嚢炎で入院し、さらに胆嚢内の細菌が血流に流れ込み敗血症に至った。幸い敗血症は軽度ではあったものの高熱と嘔吐に苦しみ、症状が緩和してからもあまり食欲が戻らなかったようだ。

人見知りなのか同室の患者とも親しくしている様子がなかったため気にかけてはいたが、未依にとって特段珍しいことではない。

患者に寄り添い、身体だけでなく心の健康を支える手伝いをするのが看護師としての役割だと自負している。