離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「か、神崎さん」

職員通用口を出て少し歩いたところで、突然名指しで声を掛けられた。振り返ると、そこには昨日退院した橋田が、俯きがちに立っている。

「橋田さん」

午前中に手続きが行われるため未依は彼の退院時には立ち会っていないけれど、昨夜病室へ行くと橋田のいたベッドが無人になっていたのを見て、無事に退院したのだと嬉しくなった。

「おはようございます。きのうはご挨拶できませんでしたが、退院おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「今日はどうしたんですか? もしかしてまた体調が悪くなっちゃいましたか?」

未依が尋ねると、橋田はこちらを凝視するようにじっと見つめてくる。

「か、神崎さんを待ってました」
「……え?」
「入院中はお世話になったので、お礼に食事をご馳走したくて。あなたが夜勤だと聞いたので、ここで待ってたんです」

意外な返答に、未依は言葉を詰まらせた。