だからこそ、律が帰国したら一刻も早く離婚届を提出しようと意気込んでいたのに、なぜか彼は『離婚するつもりはない』の一点張りだ。
その上、未依が須藤の家を出てひとり暮らしをしていると知るやいなや、恐ろしく不機嫌になった。
そもそも未依は大学を卒業して働き出したらひとり立ちするつもりだった。急なプロポーズを受けたとはいえ、夫となった彼が海外へ行って不在なのだから、なおさら須藤の家に居座るなんておかしな話だ。
富美や武志は『未依ちゃんの実家だと思って、一緒に暮らしてくれていいんだよ』と言ってくれたが、それに甘えるわけにはいかなかった。
律はぶっきらぼうだけど、とても優しい。だからこそ、一度差し伸べた手を引っ込めるように感じて離婚を躊躇っているのだろう。
きちんと話して、離婚届に判をもらわなくては。
(よし。まずは朝ご飯を食べて、律くんにどう話すか考えよう)
夜勤明けはとにかくお腹が空く。睡眠欲よりも食欲を満たしたくて、未依は行きつけの定食屋へ向かおうと歩き出した。
すると――。



