とはいえ、働き始めた当初は睡眠不足に悩まされた。夜勤の日は交代で仮眠がとれるものの寝不足だと頭が働かず、体調不良にも陥りやすい。
オフィスで働く友人にも「夜勤なんて大変じゃないの?」と聞かれるが、今ではもうすっかり慣れて体内リズムが整っている。
「わ、いい天気」
IDカードをかざして職員通用口から出た未依は、眩しく照りつける太陽に目を細めた。冬のにおいが混じった空気は澄んでいて心地いい。
けれど、未依の心は曇り空のようにどんよりしている。
先ほどの看護師たちの噂話を思い出し、ため息が零れそうになるのをぐっと堪えた。
(まさか離婚に同意してもらえないなんて、考えてなかった⋯⋯)
律と書類上の夫婦になって四年と八ヶ月。
それだけ長い時間、好きでもない未依に縛り付けてしまった。



