案の定、須藤兄弟の話題で盛り上がっているようだ。

(白衣の天使であってほしいとは言わないけど、男ウケどうこうで職場を選ばないでほしい)

軽口だとわかってはいても、同じ看護師としていい気分ではない。聞こえてくる会話に顔を顰めつつ、文句を言いたいのをグッと堪える。

「でも律先生、誰に対してもめちゃくちゃ塩対応じゃない? 恋人にも優しくなさそう。笑ってる顔とか見たことないし」
「それがいいんじゃん。医者ってだけで偉そうにしたりチャラかったりする人よりよくない? 優しくないのは減点ポイントだけど、超ハイスペ医師のイケメンとか優良物件すぎる」
「それなら櫂先生の方が好みだなぁ。律先生よりは優しそうだし」

好き勝手言い放題のふたりにモヤモヤしながら着替えていると、別の看護師の声がした。

「救急の櫂先生、すでに決まった人がいるって話だよ」
「えっ! そうなの?」
「ずっと恋人がいる気配なかったし、告白された時の『大切な人がいるから』っていうのは単なる断り文句だって話じゃなかった?」

その驚いた声を聞き、未依はにんまりと笑う。