彼はなんと言った? 『離婚するつもりはない』と言わなかっただろうか。

未依は黒目がちな目をぱちぱちとまたたかせ、向かいに座る律へ改めて視線を向けた。

すると、彼はわずかに口の端を上げる。

「やっと帰国したんだ。誰が逃がすか」

不敵に言い放つ律を前に、未依の持つ箸から鯖がぽとりと転がり落ちた。