未依を気遣ってくれるのは嬉しいけれど、それで律が疲れたり負担になってしまうのなら本末転倒だ。

そう伝えると、彼からは予想外の答えが返ってきた。

「俺のためにウエディングドレスを着てる未依を見たい。いや、でも白無垢も似合いそうだな。いっそ両方着るのも悪くない」

至極真面目に言う律を、ぽかんと見つめる。

「花嫁姿の未依を見るための準備ならまったく苦にならない。未依は、結婚式に興味ないか?」
「ううん。できるのなら、してみたい……かも」

未依の実家の玄関には、お宮参りや七五三、学校の入学式などの行事の際に三人で撮った家族写真が飾られていて、その中には亡くなった両親の結婚式の写真もあった。教会のステンドグラスの前で寄り添い微笑む両親の写真を見て、いつか自分もお姫様のようなドレスを着たいと夢見ていたのを思い出す。

「お世話になった人を呼んで、律くんと結婚したんだよって、ちゃんとお披露目したい」
「あぁ」
「律くんの隣で、律くんのために、お姫様みたいなドレスを着たい」

未依が希望を口にすると、律は満足げに微笑んで頷いた。