律が淹れてくれた食後のコーヒーを飲み、ソファに並んで座る。こういうのは勢いで聞いてしまおうと未依が切り出そうとした瞬間、律が口を開いた。
「相談なんだが、結婚式を挙げないか」
「……結婚式?」
入籍してすでに五年が経っている。どうして急に言い出したのかと首をかしげると、律はバツが悪そうな顔で理由を語った。
「俺のエゴで急な入籍になって、当時は指輪も式も新婚旅行も、なにもしてやれなかっただろ」
そういえば、指輪を買いに行った時も同じような話をしていた。余程後悔しているらしい。もう気にしなくてもいいのだとわかってもらえるよう、未依は笑って左手を掲げてみせる。
「指輪は買ってもらったよ?」
年末に一緒に受け取りに行った結婚指輪は、ふたりの左手の薬指で輝いている。律は仕事中は外しているけれど、未依はずっとつけっぱなしだ。いつだって律と一緒にいるような気持ちになれるし、視界に入るたびにニヤニヤしてしまう。
「それに、どれだけ小さな式にしたってそれなりに準備はあるだろうし大変じゃない?」



