「おかえり」
「ただいま。櫂くんとのお出かけ、どうだった?」
抱きしめてくれる夫の背中に腕を回しつつ首を反らせて尋ねると、律はなんとも言い難い表情になる。
「紬がどれだけ可愛いかって、櫂にしつこく聞かされた」
たまたま休日が揃った須藤兄弟が久しぶりに一緒に出かける予定だと聞いていたけれど、まさか紬も一緒だとは初耳だった。
紬と櫂が親子として暮らし始めて、まだ半年も経っていない。それでも櫂の子煩悩ぶりは千咲から聞いているし、順調に家族の絆を深めていると知って微笑ましくなる。
「紬ちゃん、元気だった?」
律がテイクアウトしてくれたミラノ風カツレツと温野菜を食べながら、今日一日の話を聞く。
「あぁ。最初は警戒してたのか大人しかったんだが、あれこれ食べたがるし、なんでも触りたがるし、走ったかと思えばじっと観察したり。好奇心旺盛で、見てて飽きなかったな」
「ふふ、かわいいよね。千咲も大変だって言ってた。一度気になるものを見つけると、ずーっとそこから動かなくなるって」
以前千咲の家に遊びに行った時、紬はゾウのぬいぐるみを気に入っていて、未依そっちのけでゾウとおままごとをしていたのを思い出す。



