けれど、もしもそうした勘違いをさせてしまう要因が自分にあるのだとしたら、未依の看護師としての在り方を見直すべきなのかもしれない。
未依が俯きがちに自身の考えを口にすると、律は「それは違う」と穏やかに否定した。
「看護師は日々患者に接してるし俺たち医師よりも距離が近いから、たしかに勘違いするやつが極たまに出てくる。特定の患者に肩入れしたり、距離感を間違えないように気をつけたりする必要はあるが、未依のように親身に寄り添ってくれる看護師に感謝している患者の方が圧倒的に多いはずだ」
律の言葉に、未依は顔を上げた。
「今回のことで、看護師を辞めたくなった?」
そう尋ねられ、未依はハッとする。
看護師を家政婦のように勘違いしている患者もいれば、セクハラめいた発言をしてくる患者もいる。現実は厳しく、退院できずにお別れをしたことだって何度もある。辛いことも悲しいことも、この五年でたくさん経験してきた。
それでも仕事を辞めたいなんて、今まで一度も考えたことがない。



