けれどそれも、離婚を決意した最初だけ。今は、早く彼を自由にしてあげたいという思いが大きい。
未依は声を潜めて目の前で食事をする律に話しかける。
「ねぇ、もう書いてくれた?」
〝なにを〟と言わなくても、きっと察してくれるだろう。
先日渡した離婚届を回収して、早く役所へ持っていきたい。
帰国当日に突撃したものの、疲れてるという理由でその日はサインをもらえなかった。十四時間以上のフライトだったのだから、それも当然だと引き下がったが、あれからもう一週間になる。
こそっと聞くと、律は周囲を憚らず宣言する。
「俺は離婚するつもりはない」
「ちょっ……、声が大きいよ」
慌てて必死に首を振って律を制し、周囲をちらりと見回す。



