離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


いつも以上に力の籠もった抱擁に、彼がどれだけ心配してくれたのかがわかる。未依は大丈夫だと安心させるように、律の背中に腕を回し、ぽんぽんと優しくたたいた。

「警察で話を聞いてもらって、少し落ち着いたよ。それに律くんが帰ってきてくれたから、もう大丈夫」

気丈に事情聴取を受け、パティスリーにキャンセルの電話をして、ひとり言でごまかしながら料理をしていたけれど、どうしても小さな不安は拭えなかった。

それでもこうして律の腕の中にいると、わずかに残っていた不安も霧散していく気がする。

「そうか。無事でよかった」

医師として目の前の患者を救わずにはいられなかったのだろうが、それでも未依が心配だったのだろう。ようやく安心したのか、律は大きく息を吐き、腕の力を緩めた。

「それよりも、橋田さんの手術を引き受けてくれてありがとう」
「あぁ。彼は助かったよ」

橋田は急性硬膜外血腫で緊急手術になったが、二時間ほどで無事終了し、経過も良好だったため夜勤担当に任せて帰宅してきたという。