離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


本来ならばストーカー加害者用の専門治療プログラムを受けるのが望ましいのだが、警察にその強制力はない。本人が治療に応じなければ、手の打ちようがないのだ。

未依の実家はすでに片付けてしまっているため、不法侵入の証拠はない。けれどマンションの防犯カメラを確認すれば、橋田が未依を待っている様子が映っているはずだ。

実際の住居を移しているとはいえ、自宅での待ち伏せをしていた上、目の前での自傷行為はストーカー規制法違反となる可能性が高い。今度こそ実刑になるだろうとのことだった。

(とんだクリスマスイブになっちゃった……)

結局、予約していたケーキは取りに行けず、店にキャンセルの電話をした。閉店ギリギリになってしまったため申し訳なくてキャンセル料を払うと伝えたが、スタッフは『キャンセル料は結構です。ぜひまたの機会に当店のケーキをご賞味ください』と丁寧な対応をしてくれた。

身も心も疲れていたがその優しい心遣いに癒やされ、気力でお風呂を済ませると、急いで帰ってきてくれるだろう律のために簡単な食事を作ろうとキッチンに立つ。

振り返ってみれば、今日だけでなくこの数ヶ月は怒涛の日々だった。