離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


(こっ、こんなところで……!)

未依は口元を押さえて頬を赤らめる。今は待合に誰もいないとはいえ、公共の場であり職場でもあるのだ。

けれど罪悪感を抱えて考え込みすぎる未依のための言動だと理解しているため、責めることもできない。

そうしてひとりベンチに座って悶えていると、警官が二名入ってきた。

その場で簡単な事情を聞かれ、調書をとるために警察署へと移動することとなった。一人は橋田の対応をするため病院に残り、もう一人の女性警官と一緒に警察署へと向かう。

橋田が入院していた頃の話や退院後すぐに病院で待ち伏せされた件、そして今日彼が話していたことをすべて順を追って話した。

事情聴取が終わり、帰宅したのは午後九時を回った頃。警察の話では、橋田はストーカー常習犯であり、過去にも別の女性に何度もつきまとって警察沙汰になっているらしい。接近禁止令が出された女性には近づかないが、次の被害者が出てしまうという事態が繰り返されているのだとか。

やはり以前の被害者も橋田との接点は限りなく薄く、顔を合わせれば挨拶をする程度の間柄だったという。

『あなたに落ち度はありません。怖い思いをされた被害者です。犯人が逮捕されたとしても、不安に襲われることもあるかもしれません。ひとりで抱え込まず、身近な人に相談するなどしてくださいね』

調書を取る女性警官が寄り添って話を聞いてくれたため、未依は落ち着いてその話を聞くことができた。