離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


「律くん?」
「いいか。未依は巻き込まれただけだ。気に病む必要はない」
「……うん」

律はいつだって未依が欲している言葉をくれる。全く気にしないというのは無理かもしれないけれど、彼が言うのなら考えすぎるのはよそうと頷いた。

それに、律ならばきっと橋田を救ってくれるはずだ。不法侵入や目の前でわざと階段から落ちてみせるなど恐怖を与えられた事実は消えないけれど、それでも助かってほしいと思う。

そう考えていると、律は未依の顎に人差し指をかけて上を向かせた。

「それから、イブに他の男のことばかり考えるのを許すほど俺の心は広くない」

そう言って、律は触れるだけのキスをした。

「りっ……!」
「こんな時にそばにいられなくてごめん。事情聴取を終えたら、警官に家まで送ってもらってくれ。できるだけ早く帰る」

そう言って名残惜しげに未依の頬を撫でると、そのまま櫂を追うように待合から去っていった。