櫂のひと声で、後ろに控えていた男性看護師が内線をかけに走る。その阿吽の呼吸に感心していると、「それだけじゃないんだろ」と肩をぎゅっと掴まれた。
「やっぱり震えてる。なにがあった?」
律だけでなく、櫂も幼い頃から一緒に育った幼なじみだ。未依の異変に気付いてくれたらしい。
未依は自分の両手をぎゅっと握りしめながら、これまでの経緯をかいつまんで話す。すると、櫂は不愉快そうに顔をしかめた。
「不法侵入した犯人は担当してた患者だったってことか。なにもされてないか?」
「うん、話してただけ。階段の上と下で距離もあったし。これから警察の人が来るの。ここで待っててもいい?」
「あぁ。他のスタッフにも伝えておく。脳外に電話したら兄貴が出た。たぶんすぐに来るよ」
そうして話していた矢先に、律がやって来た。
「未依? なんでここに?」
「運ばれてきた患者は、未依の部屋に不法侵入したストーカーだ」
「……は?」
律の目が鋭く眇められる。



