それから約五年の間で顔を合わせたのは、二度の一時帰国の時だけ。どちらも未依の誕生日に合わせて帰ってきてくれたけれど、それも三年目にはプレゼントが届くのみとなった。

もう潮時だ。二年の約束だった臨床留学があっさり延期されたことで、未依はようやく吹っ切れた。

男女の関係どころかキスだってしたことのない夫婦など、もはや夫婦とは呼べない。

看護師として働き始め、後輩もできた。仕事は充実しているし、同年代の女性よりは稼いでいる。誰かに縋らないと生きていけないような子供だった未依ではない。

だったら、もう律を解放してあげるべきだ。

長年に渡る恋心は胸の奥に燻ったままだけれど、さすがにもう諦めがついた。

これから互いに新しいパートナーを探すのならば、離婚は早い方がいい。戸籍にバツがついてしまったのは申し訳なく思うけれど、それでも律ほどの男性なら引く手あまただろう。

事情があって結婚したけれど、一切の恋愛感情はなく男女の関係ではなかったと、未依が相手の女性に説明してもいい。

そう考えた瞬間、胸の奥が鈍く痛む。しぶとく心の隅に残り続ける未練に、自分でも嫌気が差した。