離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


階段から転落して頭を打った旨を伝えると、彼らはすばやく橋田をストレッチャーへと乗せた。その様子を見るに、橋田の意識はないように見えた。

「未依、お前に怪我は?」

地面に膝をついたままの未依を見て、櫂が屈んで顔を覗き込む。けれど、未依に怪我は一切ない。あまりの事態にすぐには立ち上がれないだけだ。

「私は大丈夫。ごめん、ビックリして動転してるだけ。早く橋田さんを」
「そのまま置いていけるわけないだろ」

櫂は振り返って「バイタルと酸素、ライン取ったらCT。俺もすぐに行く」と看護師に指示を出し、未依の腕をとって引き上げてくれる。コンクリートについていた膝を払い、大丈夫だと繰り返した。

「ありがとう。大丈夫だから、先に行って。私、警察に電話しなきゃ」
「……わかった。本当に怪我はないんだな?」

未依が頷くのを確認すると、櫂は急ぎ足で救急出入口へと向かった。

その背中を見送りつつ、未依は先程の光景を思い出す。