未依は彼に駆け寄り、膝をついて全身を確認する。
頭から血を流し、僅かに微笑む橋田にゾッとするけれど、それでも未依には看護師としてやるべきことがある。
「すぐに救急の先生を!」
「わかりました!」
走ってきた警備員に応援を頼むと、呼吸の有無や脈を確認しながらハンカチを取り出して止血する。
「橋田さん、わかりますか?」
橋田は虚ろな目をしているけれど、呼びかけには多少の反応が見られる。けれど頭部から出血しているということは、強く打ち付けたという証拠だ。一刻を争う。
「未依?」
「櫂くん!」
「なにがあった?」
駆けつけたのは、救急医である櫂だった。後ろにはストレッチャーを運んでくる数人の看護師もいる。



