離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました


(警察に電話する? それとも、まずは警備員……?)

階段下にいる未依の後ろは救急の出入り口になっているし、階段の上は病院の正面エントランスが近いため、どちらにも警備員が配置されているはずだ。

未依がスマホを取り出したところで、橋田が「ごめんね、神崎さん」と顔を歪めて笑みを作った。

「僕がいなくなって寂しかったんですよね。だから僕の気を引こうとしているんだ。もう一度入院したらいいのかな……そうしたらきっと君は僕に優しくしてくれるはずだ……」

後ろから、彼の大声に気付いた警備員から「どうしました?」と尋ねる声と走ってくる足音がする。

けれど、一歩遅かった。橋田は未依と目を合わせたまま、階段から勢いよく転がり落ちる。

「きゃああっ!」

高さはおよそ一、五メートルほどだが、打ちどころが悪ければ怪我だけでは済まないのに、彼は躊躇いなく自ら身を投げ出したのだ。

「橋田さん!」