驚きに目を見開くのと同時に、全身に鳥肌が立つ。未依の想像が正しければ、一ヶ月前に実家の部屋に侵入したのは……。
「僕のために鍵を開けててくれてたし、なによりすごく献身的に看病してくれた。神崎さんは僕を好きなんですよね? だったら、仕事だけじゃなくてもう少し家庭を顧みてくれないと困りますよ。それから最近君の家に行くと、いつも警察官がうろついているんだ。あのマンションは治安が悪いんじゃないのかな」
未依は絶句した。ストーカーという言葉が頭をよぎる。
彼が話しているのは間違いなく日本語のはずなのに、意味がひとつもわからない。いや、意味はわかるのだが、どうしてそういう思考回路になるのか理解ができないのだ。
入院中に接した橋田は、こんな風ではなかった。寡黙で神経質な人だという印象しかないけれど、常識を逸した言動はしていなかったはずだ。
どうしたらいいのかわからず、それでも未依は反論した。
「警察がマンション周辺を巡回しているのは、先月私の部屋に誰かが勝手に侵入したと通報したからです」
「……通報?」
「私は橋田さんに自宅の場所を教えた覚えはありません。私の部屋に入ったのは、あなたなんですか?」



